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MENU:Women's QOL ポータル>>女性の病気>>老人性腟炎(萎縮性腟炎)
老人性腟炎(萎縮性腟炎)

監修:牧田総合病院 産婦人科  秋山 敏夫

高齢化社会を背景に著しく増えている病気に老人性腟炎があります。腟の中には乳酸菌などの正常菌が多くいますが、閉経に伴い正常菌が少なくなり悪玉菌が多くなります。その結果、膣炎になることを老人性膣炎といいます。
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どんな病気

 女性の平均年齢が80歳を超えた現在、以前と比べ著しく増えている病気に老人性腟炎があります。腟の中は温かく湿っていて有機物が豊富にあります。この状態は微生物の繁殖にも最も適しています。しかし、健康な女性の腟内は乳酸菌が繁殖していて酸を分泌し、微生物の繁殖を抑えています。この状態が老化によって悪化し、いろいろな症状を訴えるようになります。


●腟の構造と生理
 内性器(子宮・卵巣・卵管)と外性器(外陰部)をつなぐ長さ7〜8cmの導管です。横径は約2〜3cm、分娩時には9〜10cmに広がります。 腟には自浄作用というはたらきがあります。腟壁上皮は卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン)の作用により、表皮細胞への分化が促され細胞質の内にグリコーゲンが蓄積されます。剥離した細胞内のグリコーゲンはブドウ糖に分解され、腟内の乳酸桿菌(デーレルライン桿菌)によって乳酸に換えられます。これにより腟内は酸性となり、酸性環境に弱い細菌の増殖が抑制されます。これを腟の自浄作用といいます。

●腟炎とは
 卵巣機能の低下、持続する出血、過度の性的刺激、腟内の異物や免疫機能の低下により、一般細菌が増殖する非特異的な腟炎と、真菌、ヘルペス、トリコモナス、クラミジア、淋菌、などの特異的な腟炎に分けられます。後者は性感染症ともいわれます。 閉経(生理が止まった後)を過ぎた女性は卵巣からエストロゲンの分泌が無くなるため、ブドウ糖が不足し腟内の乳酸菌が著しく減少します。その結果、微生物が増殖します。この状態を老人性腟炎といいます。

 腟壁は女性ホルモンや少量の男性ホルモン (女性でも少量の男性ホルモンは分泌されています)により、閉経後十数年たっても若い時代の2/3の厚さが保たれています。しかし一部の女性ホルモンが不足してくると腟のひだが少なくなります。また、腟壁のコラーゲンが少なくなり壁そのものも薄くなります。この状態を萎縮性腟炎ともいいます。
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症状

腟内が微生物によって汚染されると、薄くなった腟の壁は充血します。腟内の分泌物は黄色あるいは赤色でやや膿性、時には感染臭を伴います。腟壁の粘膜は炎症のため疼痛や灼熱感などの腟不快感が発生します。その他、腟入口の乾燥感、掻痒感(かゆい)、違和感、性交痛、性交時出血などを訴える人もいます。  閉経後の女性の多くはこの状態にありますが、症状として出る人、症状があっても気にならない人などいて、全ての女性に治療が必要なわけではありません。
どんな診断・検査

 医師による肉眼的な観察が一般的な方法です。最近は診断と治療的効果判定の数値化を目的に腟健康指数(表)を用いて診断する方法も行われるようになりました。 腟内の細菌検査を必要とする場合もあります。
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どんな治療法

  エストロゲンの経口剤や貼付剤(HRT)または腟錠(局所療法)を使用します。細菌感染がひどい場合は抗生物質が入った腟錠を併用する場合もあります。 多くは1〜2週間の治療で治りますが、1カ月程度薬を使用しないと治らない人もいます。


■HRT:ホルモン補充療法(hormone replacement therapy)とは
 閉経は更年期障害、萎縮性腟炎、尿失禁、骨粗鬆症、動脈硬化症等種々の症状を引き起こします。原因は、エストロゲンをはじめとする女性ホルモンが急激に減少するためです。これらの疾患を予防し、閉経後女性の健康の保持・増進させるための方法としてホルモン補充療法が開発され一般臨床に応用されています。HRTは開発当初エストロゲン単独の補充療法であったため、子宮内膜癌の発症が増加しました。その後プロゲスチン(黄体ホルモン)を併用することにより子宮内膜癌発症を回避できるようになり再びHRTが脚光をあびるようになりました。アメリカやヨーロッパでは閉経後女性の10〜30%が使用しているとのことですが、日本ではいまだ1%の普及率です。 2002年5月、アメリカから16万人にも及ぶHRT使用女性の大規模調査の結果、骨折と結腸・直腸癌のリスクは減少するが、浸潤乳癌のリスクが増大すること、冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞 等)の予防効果がないことが分かりました。さらに、静脈血栓症リスクが高まることも確認されました。

これをもとに日本更年期医学会は、以下の6項目の勧告を提示しました(一部省略)。

1.
更年期・閉経後女性に対するヘルスケアの基本は、従来から強調されてきたように、精神・身体機能の評価と、これらに基づいた食事・運動・栄養などの生活習慣の適正化であり、それで十分な効果がみられない場合には薬物療法を行う。

2.
HRTは薬物療法の1つの選択枝であり、これを選択するにあたっては、一人一人の女性について、そのリスクとベネフィットを慎重に判断する。

3.
更年期症状に対するHRTの効果は明らかであるので、治療前に禁忌でないことを確認し、また治療開始後には、その効果を判定するとともに、乳癌やその他の異常所見の有無をチェックして安全性を確認しながら治療の継続・中止を判断する。

4.
閉経後骨粗鬆症に対するHRTの予防・治療効果は明らかであるが、他にも骨折予防効果を有する薬剤がある事を伝えるべきである。

5.
心血管系疾患の予防を目的として、HRTは行わない。

6.
子宮のない女性に対しては、エストロゲンのみを用いる。子宮のある女性に対するHRTには、子宮内膜癌予防の見地からプロゲスチンの併用が必要である。併用方法についてはそれに伴うリスクを十分に説明し、納得を得た上で行う。治療開始後は、乳房検診・血圧測定・脂質や凝固線溶系の血液検査などを行い、慎重に治療経過を観察する。
今後は

  クオリティーオブライフ(QOL)の向上を目指した生活のためには、夫婦生活のあり方も関わってきます。最近は性交障害を訴え産婦人科を受診される患者さんが多くなってきています。老人性腟炎は、単に加齢による病気ではなくQOLと関連した病気でもあるのです。一人で悩まず、気軽に産婦人科医に相談してみて下さい。
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